三休橋筋の北端、「栴檀木橋」の南詰に植えられていたセンダンの大木が台風で倒れてしまったのは、2012(平成24)年のこと。三休橋筋のシンボルでもあったのに、「えらいこっちゃ!」とみんなが思っていたところ、翌年にはセンダンの苗木が寄贈されました。寄贈者は、北浜に本店を構える「大阪シティ信用金庫」です。
1927(昭和2)年、市民と中小零細企業のための金融機関「大阪市昭和信用組合」が発足し、1951(昭和26)年に制定された信用金庫法により「大阪市信用金庫」と改称。いくつかの信用金庫との合併を経て、2013(平成25)年に「大阪シティ信用金庫」が誕生しました。
専務理事を務める畑中一起さんは、総務人事担当役員として、センダンの木の寄贈をはじめとする、すべての社会貢献事業に関わっています。センダンの木を大切にしている理由や、社会貢献を事業の柱の一つに据えておられる経営理念などを熱く語ります。
「栴檀木橋がつなぐもの」
栴檀木橋と機関誌『せんだぎ』
当金庫は大阪市役所が発祥の地で、大阪市長が理事長を務めていた時期もありました。その後は北浜へ移転した経緯があるため、「栴檀木橋」を大阪市役所のある中之島と、当金庫の所在する船場地区を結ぶものとして大切にしてきました。
1955(昭和30)年に創刊した機関誌『せんだぎ』の名前も、栴檀木橋とセンダンの木にちなんでいます。「栴檀は双葉より芳し」という言葉もありますが、若々しさや知性、芳しさにたとえられるセンダンの木のイメージと、その名前をもつ栴檀木橋に当金庫と市民とのつながりを託すという、当時の理事長の強い想いが込められています。『せんだぎ』は月刊誌で、2022年1月に発刊800号を迎えました。関西の企業や金融機関が発行する機関誌で、いちばん長く発行し続けているのは本誌なのかもしれません。
「センダンの木の植樹」
栴檀木橋への強い愛着
先ほど述べたように、当金庫は栴檀木橋に強い思い入れがありましたから、2012(平成24)年の台風で橋のたもとにあるセンダンの大木が倒れてしまった際には、当時の理事長がじきじきに「大変だ!すぐに新しいセンダンの木を植えなければ!」という声をあげました。すぐに大阪市へ相談して、翌年6月に植樹をすることになりました。
ほかにも当金庫の80周年事業として、中央公会堂に大阪市とサンフランシスコとの友好都市50周年を記念して陶板を寄贈しましたし、土佐堀川沿いやバラ園の入口にも銘板を寄贈しています。それらを見た市民が、SNSで発信してくれたりして、「寄贈してよかったなぁ」と、とてもうれしく思っています。
植樹したセンダンの木自体は公共物になるため、手入れは大阪市にお任せしていますが、周辺の清掃などはボランティア活動としておこなっています。
「地域の活性化に関わる」
協賛から社会貢献へ
当金庫では「預金」「融資」「為替」に加え、「社会貢献」を4番目の事業として位置づけています。船場地域とも古くから関わりはありますが、これまではやや“協賛”的な協力に留まっていたかもしれません。最近では、「集英連合振興町会」や「船場倶楽部」にも入会して、お祭りなどのイベントにも協力しています。資金面だけでなく、「まちをどう活性化していくか?」といった実質的なところにも、我々も一緒になって“参加”していくことが大切だと考えています。それが、地域金融機関としての本来の社会貢献のあり方だと思います。
大阪市とは、2016年に包括連携協定を締結して、24区全体に対して目に見える連携をし始めています。本部だけでなく各営業店が区役所と連携して、広報や福祉、区民祭りへの協力などを行っています。さらにもう一歩進んで取り組み始めているのは、「地域の循環サイクルの構築」です。例えば、営業店に野菜バーを設置して地元野菜の販売をしたり、自転車やモバイルバッテリーのシェアリングサービスなどを実施したりして、そこで得た収益を、地域のお祭りや子ども食堂などに寄付しています。利益は、目に見えるかたちで地域へ還元することが必要なんです。野菜や自転車で還元したほうが、お客さまに理解してもらいやすいわけです。
「信用金庫と社会貢献」
『せんだぎ』からはじまる社会貢献
まちが発展しないことには、信用金庫の発展もありません。地域の伝統文化の継承だけでなく、「まちを変えていく何か」をやりたいと思っています。近年、都心の人口が増する傾向にあるので、「新住民と古い住民の融合」も重要なテーマになっています。その点、田辺三菱製薬さんの地蔵盆イベントは素晴らしいですね。大きなイベントよりも、足元の祭りやイベントなど、草の根的な活動への協力の方がお客さんに実感してもらえると思います。
「一過性ではなく長く続ける」ことも大切です。地域に根差して貢献する活動を続けていくことが、「預金」「融資」「為替」の3つの事業にも還っていくだろうと思います。若い職員にも「社会貢献が仕事の一環である」との考えが浸透するようになりました。当金庫の社会貢献に対する取り組みにかけては、おそらく信金の中ではトップクラスではないでしょうか? それぐらいの気持ちで私たちは取り組んでいます。
機関誌『せんだぎ』は、栴檀木橋のように、当金庫と市民のみなさんや取引先をつなぐ架け橋となるもの。それは社会貢献の第一歩です。社会貢献の大切さは、歴代の理事長に言われ続けてきたので、その思いは強いですね。後輩たちにもどんどん伝えていきたいです。それが我々の私たちがやってきた社会貢献の証なのだと思うんです。